8月号会報「トップの羅針盤」 ㈱システムエンタープライズ 代表取締役社長 三宅 一郎 氏

会社を継ぐことになったきっかけは何だったのでしょうか。

 当社は父が創業したソフトウェア開発の会社ですが、実は私は会計の仕事に興味があって公認会計士の事務所に就職していました。その頃から当社の監査役にもなっていて、会社の内情を見ていたんですが、率直な感想は、「うちの会社ってすごいんだな」ということでした。
 お客様第一、これはどこも一緒です。いただく対価で経営規模を大きくしていくということも分かります。ただ社員への対応が当社は違いました。
 先行きが不透明な時代、中小企業にとって定期的な昇給は大変なことです。中小企業の給料はほとんど上っていなかったですからね。そんな中で父は強い信念で「お客様に満足を、会社をより良く、社員を豊かに」という〝三者総繁栄〟という経営理念を掲げ、お客様と会社はもとより、社員の生活を豊かにと利益を還元することに心を砕き実践していたんです。
 その考え方に共感し是非力になりたいと思うようになって、平成22年7月に正式に入社することになりました。ただ、リーマンショックの影響で会社はどん底、当時社員は70~80人いましたが半分ぐらいに仕事がなくて、私なりに覚悟を決めて、腹をくくっての入社でした。お客様が少しずつ戻り始めたところに東日本大震災の追い打ちもあって、入社2~3年がいちばん厳しかったことを覚えています。

教育・訓練体系図を作成し、社員のスキルアップを積極的に支援。マンツーマン教育など新人教育にも力を入れる

その後業績はV字回復していますが、要因はどこにあったと思いますか。

 実際、リーマンショックの時は全社員の給料を1~3割カットしていました。普通ならここでモチベーションはがた落ちですよね。でも、ここからみんなで会社を盛り上げようという雰囲気が高まりました。役員社員みんなが懸命にあがいていました。それは〝三者総繁栄〟という理念がしっかり根付いていたからでしょう。だからこそお客様に満足していただくために提案をし続けることができましたし、その思いは長年お付き合いいただいていたお客様にも通じていったのだと思います。
 また私自身、当社の技術力に対して十二分に自信を持っていましたから、きっと復活できるという確信めいたものはありました。
 デジタルを活用して社内業務を効率化したい、経費を下げたいというニーズを捉え、業績は回復し始めました。毎年利益が増え、昇給や賞与に反映できる良い循環ができました。
 当社では、得られた利益の半分を現場に還元するという考え方を持っているのですが、毎月の収支、決算書などの財務内容を社員に開示しているので、年2回の賞与や決算賞与がどのくらいになるかも分かる仕組みになっています。2021年度以降は、賞与と決算賞与合わせて、年間で給与12か月分を超える賞与が出せるところまでになりました。
 さらにコロナ禍以降は、電子商取引や、売り上げを伸ばすためのアプリケーションの利活用といった動きに拍車がかかり、私どもの事業の必要性が高まってさらに業績を伸ばすことができました。

営業マンがいないと伺っていますが。

 はい、うちには営業専属の社員は一人もいません。私達はそれぞれのオフィスや工場に適したシステムをカスタマイズして組み上げ、満足度の高い仕事を提供して、お客様にとってなくてはならない存在になることで、継続してお仕事をいただいてきました。
 そのためにも技術力の高さは必要ですが、ビジネスの根底は人と人。社員にはコミュニケーションの重要性を常々伝えています。先方の企業風土を理解し、お困りごとについてともに考え、ニーズをより深く把握できる関係性の構築が何より重要で、次の仕事にもつながっていると思います。技術職の採用についても技術力よりもむしろ営業の資質を持った、人とのコミュニケーションが好きだという人材を求めています。技術は入社してから教育すれば十分ですから。

令和4年に新設された社屋は、働きやすさを追求した拠点で、社員200人を目指す同社の成長を支える

社員の能力向上を大変支援しておられますね。

 一つ言えるのは、全くの新しい技術がポンと出てくるということはそうそうなく、ほとんどの場合、何かと何かをブレンドして生まれているということです。となれば、元の技術をちゃんと習得しておけば、時代の流れについていける。次に何が来るのか正直わかりませんが、急速に進歩するIT業界で後れを取らずに走り続けるには、必要と思える資格を社員みんなで習得し、技術や知識を高めておくことが必要なんです。
 当社には社員教育のワーキンググループがあり、どんな資格について学んでいればお客様へのサービスがより広がるか社員に情報提供しています。また、それまで資格を取得した社員には受験料の2倍の報奨金を支払っていたのですが、WGからの提案を受けて5倍にしたところ、資格取得者が増え、報償金は毎月100万円ほどに膨れ上がることになりました。資格取得の機運の高まりということで、これはうれしい悲鳴となりました。社員の情報関連資格の保有率は83%にもなっていて、これは大手のシステム会社からも驚かれるほどです。

好調を続ける中で、今後の課題は何でしょうか。

 私は2030年までに社員をほぼ倍の200人にすると社内で公言しているんですけど、それにはまだまだ知名度が低いと思っています。
 また、エンジニアがお客様の窓口になるということは、ニーズを直接つかむことができるという強みになりますが、裏を返せば、専属の営業マンがいないために新しいお客様とのコネクションを作れないという弱みにもつながります。 名実ともに岡山№1のシステム会社にしていくには、新しいお客様の獲得と、どのようにして会社の知名度を上げるかが課題で、先頭に立ってシステムエンタープライズという会社の存在を発信していくことが私の役割と思っています。
 将来的にはうちの社員の子どもたちに、「お父さんの、お母さんの会社はシステムエンタープライズだよ」と言えば、「あのシステムエンタープライズなの!」と子どもたちも知っているぐらいの会社に発展させられれば、なお嬉しいと思っています。

三宅 一郎(みやけ・いちろう)
昭和46年生まれ。公認会計士事務所を経て、平成22年、㈱システムエンタープライズ入社、平成24年4月に代表取締役社長就任。先代の意志を継ぎ、お客様・会社・社員が共に繁栄を目指す経営理念「三者総繁栄」を実践する



本 社  岡山市北区富吉3202-1(岡山リサーチパーク)
事業内容 情報システムに関するコンサルティング、
     コンピューターソフトウェアの受託開発
代表者  三宅 一郎 代表取締役社長
設 立  昭和57年12月
資本金  5,000万円

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