トップの羅針盤 第18回 ㈱岡山ランドリー 代表取締役社長 佐々木 篤 氏

トップの羅針盤2026年3月号

岡山ランドリーに入社されたのはどういった経緯でしたか?

 私は大学卒業後、県庁に就職し、約8年間、公務員として働いてきました。その後、父が社長を務めていた岡山ランドリーに入社することになります。
 私を将来の後継者候補として迎えては、という話はかねてから社内でもあったようなのですが、実際に役員の方々から誘われた際には、やはり少なからず驚きましたね。県庁での仕事が大変充実してきたところでしたので大いに迷いもしました。ただ、父がまだ従業員だった頃には、創業者で初代社長の矢一明雄氏に私もずいぶん可愛がっていただきましたので、会社への愛着も強かったこともあって、転職を決意して平成3年に入社しました。不安も大きかったですが、妻が理解をしてくれて、後押ししてくれたことも大きかったですね。

入社して取り組まれたのはどんなことでしたか?

 当社は昭和6年に創業した、県内でも最古参といっていいクリーニング事業者です。昭和35年には法人設立し、順調に事業を拡大してきました。
 しかし、私が入社した当時は、バブル崩壊の不景気が押し寄せていたことに加えて、設備投資の負債が重荷になっていて、経営はかなり厳しい状況でした。
 2年ぐらいかけてすべての業務内容を学ぶなかで、次第に会社の現状と課題が見えてきました。一般的に、クリーニング事業は季節による繁閑差が大きく、収益の差がはっきりしています。一方で、シーツ、タオルなどの繊維製品を定期的に貸し出し・回収するリネンサプライ事業に季節の差はあまりありません。売り上げの安定を図るためにこの事業に注力することにしました。
 しかし、当社はこの事業では後発で、シェアを取るには他社ができないことをしなければなりません。そこで、病院敷地内で洗濯場を所有していた倉敷市内の病院に、従業員の方々の雇用も含めて、敷地内の洗濯場を当社で引き受けることを提案しました。
 病院にとっては利便性の大きな向上になりますし、当社にとっては他社が参入できない強みを確立することができます。ただ、そのための十分なサービス体制を構築するためには多額な設備投資も必要です。大きな決断でしたが、覚悟を決めて周囲を説得し、平成9年に開設にこぎつけました。
 結果、大きな需要を獲得することができ、また同業者からの委託も受けるようになって、リネンサプライ事業を大きく拡大させることができました。

入社から9年後の平成13年に社長に就任されました。

 社長として経営の安定に努めるなかで、大きな教訓となる出来事がありました。大口顧客だった大手ホテルの岡山からの撤退が決まり、リネンサプライ事業のホテル向け売り上げの約4分の1が一気になくなったのです。ホテルに詰めていた5人の社員には辞めてもらうしかなく、この時は本当に辛い思いをしました。「こんな商売の仕方でいいのか」と自問自答を繰り返しました。
 出した結論は、長い歴史の中で培ってきた当社の強みである外商の営業力を活かした小口顧客の開拓です。小規模から中堅までのホテルや病院をしっかりとケアし、取引先を増やすことで売上確保を図りました。顧客をたくさん持つと対応が大変だと言う異論が社内にはありましたが、リスクを分散し、雇用を守っていくためにはどうしても必要なことだったと今でも考えています。

新たに始められたことはどんなことでしょうか?

 当社では、革製品や剣道の防具といった特殊なクリーニングにも対応できる技術力を磨いてきました。「料金は高いけれどいい仕事をしてくれる」という評判が浸透していましたが、若年層の顧客獲得が課題となっていました。
 一方で職人たちは「技術を安売りしたくない」という気持ちを強く持っていましたので、新規顧客の獲得のため、既存ブランドとすみ分けた「ピュアウォッシュ」という新ブランドを平成15年に立ち上げました。
 一部の品目を除いて、ワイシャツは百円、それ以外のものはコートもジャケットも三百円という2つの価格帯のみを設定した、コストメリットを謳ったブランドです。
 あまりに大胆な価格設定に社内からはかなりの抵抗がありましたが、私は強硬にツープライスでいいと押し通しました。既存ブランドとは洗濯の方法が違うので、百パーセント子会社に外注する形をとり、ビニールカバー等の包装をせず、手間のかかる「たたみ」の工程を排除してハンガー吊るしでの引き渡しとするなどコストカットを徹底しました。
 その甲斐あって、若いサラリーマンや、教育費や住宅ローンの負担が大きい子育て世代の方々が顧客として増えました。そうしたお客様が、より高品質な既存ブランドも利用してくださるようになり、相乗効果が見込めるようになったことから、現在ではブランドを統合し、一体的に店舗運営をしています。

「技術を安売りしない」という信念を貫き、職人が一点ずつ誠実に向き合っている。他店が断る汚れもプロの技で落とし、最高品質を実現

人材育成について社長として心がけてこられたことは?

 社長就任当初から、企業の持続的な発展のためには社員の自立が不可欠だと考えてきました。社員は困難に直面した時、「社長どうしましょう」と言いがちですが、「あなたはどうしたらいいと思う?」と必ず問い返してきました。自分の会社なんだ、という意識を持って、自分の考えを基軸に率先して動く、能動的に働いてくれる社員を育てたいと考えています。
 「あの時叱られてよかったな」と思ってもらいたいですし、「わが子をこの会社に託したい」、そんなふうにいつか思ってもらえると嬉しいですね。

今後はどのように進んで行かれますか?

 令和4年に、創立90周年の記念事業として新社屋に移転し、5つの工場を統合した新工場を稼働させました。工業用水の利用で水道料金を約3分の2までコストダウンでき、重油からガスへエネルギーを転換しCO2の削減も可能になりました。新しい機械も導入でき生産性も向上しました。
 少子高齢化やビジネススーツのカジュアル化などで、クリーニングの市場は小さくなっていて、経営は決して順風満帆ではありませんが、当社の技術力を求めていただけるニーズは必ずあります。他社と差別化できる我が社の強みを追求し、誠実な仕事を積み重ね、社員が自分で考えて成長する会社にしていきたいと思っています。

運営健康経営の一環として、女性社員の発案で整備されたカフェ風の休憩室。昨年始めた健康経営のコンサルティング事業では、産業医の派遣など他社へのサービスも展開している

佐々木 篤(ささき・あつし)
昭和33年生まれ。島根大学農学部卒業。平成3年、㈱岡山ランドリー入社。平成13年、同代表取締役社長就任、現在に至る。社会貢献事業にも取り組み、平成23年から28年まで(一社)岡山就労支援センター代表理事

本 社  岡山市南区築港元町13-2
事業内容 ク リーニング事業(一般衣類・ホームクリーニング)、リネンサプライ事業(病院、ホテルや飲食店向けのリネン類洗濯・レンタル)
創 業  昭和6年
資本金  4,500万円

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