6月号会報「トップの羅針盤」 ネッツトヨタ岡山㈱ 代表取締役会長 石井 清裕 氏

昭和43年にお父様が今の会社を設立して、石井さんは大学卒業後すぐに自動車業界に入ったんですね。

 元々車好きでもありましたし、18歳になるとすぐに免許を取って運転をしていました。
 大学を卒業した後、まずは勉強のためトヨタ自動車販売㈱に入社しましたが、オイルショックの影響もあって、自動車販売の市場も悪くなっていました。車が全然売れなかったですね。
 3年で地元に戻ったんですが、父の姿を見て大変だなと思いました。当時はそれを支える力なんてなかったですし。とにかく頑張らなきゃという気持ちだけでした。
 仕事は苦労の連続でしたが、その中で、同期や先輩後輩とは良い時も悪い時もともに喜んだり、悲しんだりしていこうという意識が芽生えました。今も続く「社員は家族」という意識ですね。

岡山市南区泉田の岡山店。県下に新車店舗11か所、中古車店舗3か所などを展開

平成3年に社長に就任して、どんなことを意識されましたか。

 当時はまさにバブル崩壊の直後で、新車販売はなかなか伸びない苦しい時期でした。
 こうした時に何をすべきか。当社の商品は車ですから、商品そのものの付加価値を向上させることは難しい。行き着いたのはCS、いわゆるお客様満足度を上げようということで、外部の専門家を招いて社員教育を徹底していくことにしました。「いらっしゃいませ」から、いろんなサービスの仕方とかマナー教育ですね。
 これは全社員が対象なんですが、実は最初に我々役員から研修を始めたんです。いつも偉そうにしている人から頭ごなしに注意されると不服に思うのも人情ですが、同じ教育を受けていて叱る基準が揃っていると、言われた側にも納得感があるんです。一緒に研修を受けて勉強しているっていうのがやっぱりミソなんですよ。
 また、そうした研修を受けた部長や店長が、敷地内で雑草が伸びているところを見つけたりすると自然と自分で掃除をするようになるんです。それを見た社員はどう思うか。ますますやらないといけないと思いますよね。
 教育は時間がかかると言われますけど、当社では教育の効果はすぐに現れてきたと思います。ただ、今はもう叱ることが難しい時代です。やらせてみて少々間違ったとしても、やれたことを褒めていかないと。

お客様対応に力を入れておられると思うのですが、他社とはどのような差別化をしてきたのでしょう。

 一つは無料洗車サービスです。基本的な洗車はいつでも何度でも無料でやっています。それと事故現場急行サービス。お客様が事故を起こされたときには当社の社員が現場へ駆けつけることになっています。事故直後はとても不安な気持ちになりますから、これは大変ご好評をいただいています。
 最も特徴的なサービスとしては、周りの模範になるようなお客様対応ができるフロアの女性社員に、コンシェルジュという資格を与えて、各店で接客のプロとして活躍してもらっていることでしょうか。一流ホテルにはコンシェルジュがいますよね。そういう対応ができるように、ということです。
 例えば検査作業などの待ち時間でお客様が退屈している時などに、地元の観光情報や、店舗周辺のグルメ情報などをご提供したり、幼いお子様をお連れならキッズコーナーにご案内したり、お客様の状況に応じた配慮に努めています。
 コンシェルジュには「おかやま検定」の合格も必須としています。おかやま検定は、地元の産業や歴史、名物、時事的な知識などが学べますので、お客様との会話にとても役立っています。
 その他には、暮らしの健康相談をやっています。体調が悪い、病気になったという時に電話で相談をお受けし、医師がいるコールセンターから状況をお聞きしてアドバイスします。近くの病院を探したりもしますね。コロナウイルスの感染拡大時にはいろんな相談がありました。車の販売とは直接は関係がないことですが、当社には「お客様とともに」という考え方が根底にありますので、お客様のカーライフ、生活全般の助けになりたいという想いでサービスをご提供しています。

各店舗で接客のプロとしてコンシェルジュが活躍。お客様に寄り添ったきめ細かいサービスを提供する

今後はどのような目標をお持ちですか。

 エネルギー面では電気自動車の推進もありますが、ハイブリッドの良さも見直されています。さらには究極のエコカーと言われる水素自動車など、今後はいろいろ混在していくでしょう。他にも自動運転技術の実用化など、自動車業界は今、100年に一度の大きな変わり目だと言われています。大きな環境変化のなかで、的確に、そしてスムーズに社業の軌道修正をしていけるように努めていきたいと思っています。
 そして社業で業績を上げてしっかり稼いで、それによって社員が、また家族が幸せになることがとても大事です。それと同時に社会貢献も重要だと思うんです。地域の方に、ネッツトヨタ岡山がこの街にあって本当に良かったと思っていただける会社にしたいですね。

今年は山陽新聞賞を受賞されました。観光振興での功績も高く評価されています。

 私は商工会議所で文化観光の事業に関わるようになって、歴史に興味を持つようになりました。ただ岡山の歴史をご存じない地元の方が結構多くて、宇喜多直家公、秀家公や小早川秀秋公、さらには池田家についてもあまり知られていないんですよね。そこで、「宇喜多秀家フェス」や池田厚子様をお招きした園遊会も主催させていただきましたが、その意義を実感することができて充実していました。
 これまでにいただいた表彰は、社業とともに社会貢献でできる限りの努力をした結果として大変うれしく思っていますが、良き友人や関係者の方々の助けがあってのことです。それと何よりも社員に恵まれたということですね。
 観光関連の役職をいくつかやらせていただいていますが、今年秋の森の芸術祭、来年の瀬戸内国際芸術祭、岡山芸術交流とビッグイベントが続きます。それから宇喜多家の大河ドラマの誘致、これをぜひ頑張らなければと思っています。観光客も増えてきていますから、大きなやりがいを感じています。

石井 清裕(いしい・きよひろ)
昭和27年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。昭和55年、トヨタオート岡山㈱(現・ネッツトヨタ岡山㈱)入社、平成3年5月に代表取締役社長就任、昨年5月から現職。おかやま観光コンベンション協会会長、岡山県観光連盟会長など公職に就く。国土交通大臣表彰(平成19年)、黄綬褒章(平成21年)、旭日小綬章(令和4年)、第82回山陽新聞賞(令和6年)。無類のワイン愛好家で、全国にも300人ほどしかいない名誉ソムリエの称号を持つ

本 社 岡山市南区泉田1-3-6
事業内容 ト ヨタ系新車販売、中古車販売、自動車の車検・点検・整備、カーリース等
代表者 石井 敦浩 代表取締役社長
設 立 昭和43年3月
資本金 4,800万円

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