女性活躍の推進に向けて(専門家インタビュー)

「見えないリスク」から企業を守り、新たな価値を創出するイノベーションを起こす。

女性リーダーの育成は、現代の企業経営において避けて通れないテーマとなっています。育成を進める上で、企業や女性自身が乗り越えるべき課題とは何か。リーダー育成の専門家に、その意義と具体的な育成手法について聞きました。

㈱Driving force 代表取締役 柚木 佑佳 氏

 現代の企業経営において、多様性(ダイバーシティ)の確保は、企業が環境変化の中で生き残り、成長していくための必須の要素です。しかしながら、特に地方の企業では、長きにわたり男性が運営してきた経緯から、事業運営の視点や考え方が無意識のうちに男性中心に偏ってしまいがちです。

 この視点の偏りは、ビジネス上の大きなリスクを生み出します。同じ性別、同じ考え方の人たちばかりを集めてしまうと、それ以外の発想や視点が欠落し、マイナスのリスクに気づけないだけでなく、新しいビジネスや価値創出につながるイノベーションというプラスの要素も生まれづらくなるという、二重のデメリットが発生します。

 例えば、あの9.11のテロは、CIAが採用していた人々の基準が特定の性別(つまり男性)や国籍に偏っていたため、テロの兆候に気づけなかった、すなわち多様性の観点が抜けていたために防げなかったとも言われています。

 全く違う視点を持つ人材を組織に取り入れ、その能力を生かすことは、企業経営をよりよい方向に導くための重要な戦略なのです。

 こうしたことからも、女性リーダーの育成は避けては通れない重要課題と言えますが、女性には、職場の和を大切にするあまり、スタッフや部下との間に「線を引く」(境界線を設ける)ことが難しく、横並びの関係でマネジメントをしてしまう傾向があります。

 その結果、管理職としてのスタイルを確立できず、かえって部下からの信頼を得られずに成果が出ないという悩みを抱えるリーダーが多く存在します。特に、男性の部下をマネジメントする際には、距離感の取り方の難しさが顕著に現れます。

 こうした課題は、これまで女性管理職が決定的に不足していたことから、「あの人のようになりたい」と思えるような、ロールモデルとなる事例に触れる機会がなかったことに起因する側面があります。

 しかし、このようなマネジメントスタイルの問題は、体系的なリーダーシップ理論や多様な事例を知ることで解決できるケースが多くあります。

 経営者が取り組むべきは、行政や外部機関の支援施策等も活用しながら、女性がマネジメント上の課題を克服するための戦略的な支援を行うことです。優秀な「プレイヤー」を、必要な理論と多様な視点を持つ管理職・リーダーへと育成することで、今まで気づかないうちに抱えていた「見えないリスク」から企業を守ることができるとともに、新たな価値を創出するイノベーションを起こすことに繋がるのです。

【柚木 佑佳 氏 略歴】
2008年、岡山村田製作所に入社後、13年間にわたり人事業務に従事。在籍中には村田製作所人事部への出向も経験し、帰任後は同社で初の女性リーダーに任用され、子育てをしながら8名のメンバーを率いるチームマネジメントを担う。2021年に中小企業診断士として独立。現在は、人事コンサルティング、研修講師、コーチングセッションを展開。2児の母として、家事・育児・会社経営に日々奮闘している。

(令和7年11月)

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